Goblin Valley State Park

楽しかったアーチーズ(Arches)やキャニオンランズ(Canyonlands)に名残惜しくも別れを告げて、進むUS-191はこの先不思議な区間を貫きます。
こんな感じで辺り一面黄土以外、まったく視界に入らなくなります。
停電ならばブラックアウト、雪一面の景色ならばホワイトアウトでしょうが、ここは空と道路以外、視界に入る色は黄一色の「イエローアウト」な区間です。
まるで月面。無論行った事などないけれど、行けば多分ここを思い出すでしょう。
路肩の警告表示に書かれてる文字を見て、少しギョッとします。ここは'Dust Storm Area'。
US-191は最後に、「砂嵐多発地帯」の中枢を通過します。

僻地を貫通するせいか、制限速度は高めの75マイル。ただし砂嵐発生時は35マイル制限。
「怒りの葡萄」でジョード一家が長年住み着いた土地を離れ、新天地に移る事を決断したのも、この砂嵐が原因でした。
不謹慎ですがダストストームとはどれほど凄いものなのか、少し体験したい気もしてます。

I-70との合流点、クレセント・ジャンクション(Crescent Junction)(Exit 182)に到着。
と言ってもそこに集落があるわけでもなく、主要なハイウェイ同士の交点だから便宜的につけられた感の地名ではあります。
ここはロサンゼルス(Los Angeles)起点で一番遠い地点、ここより旅も折り返し。
そろそろ出発点へ戻る局面に突入かと、少し淋しい気もしてきました。

ひさびさの大幹線に乗り換えた後は、西に進路をとります。
このI-70、東に進めばデンバー(Denver)、カンザスシティ(Kansas City)、セントルイス(St. Louis)等の大都市を結びますが、西に進めばこの先I-15に合流するまで僻地しか通りません。
ここに展開されるのは地層帯が派手に露呈した、乾いた惑星の上を走るフリーウェイ。
相変わらず、生命の臭いが希薄です。

北側を併走するのはユニオン・パシフィック鉄道(Union Pacific Railroad)の貨物列車。
アリゾナ州内のBNSFと比較すると運行頻度が希薄に思えるのは、気のせいでしょうか？
もっと列車と遭遇したかったのですが、この先のグリーンリバー(Green River)の町を越えると、残念ながら線路はソルトレイクシティ(Salt Lake City)方面へ別れてしまいました。

グリーン川との交点に現れた、川と同じ名前のグリーンリバーの町で一旦休憩。
ここは砂漠の中の小さなオアシス。久しぶりに人を見ました。
少し安心しつつも、でもこんな日本から遠く離れた町に日本語を話せる人などいないのだろうなとか考えると、なんとなく話相手が欲しくなり、人恋しい気分になってしまいます。
そう言えば昔見た「ファーゴ(Fargo)」という、ミネソタの片田舎で起こった殺人事件を題材にした映画の中で、脇役ですがちょっと変な日系人役がいたのを思い出しました。
自分と縁ない土地に単身赴任させられた後、なんとか仕事関係の身の回りとうまくやりつつも、他人の関心を引きたいため、話す内容にどうしても「虚言」が抜けない人物でした。
なんだか身につまされる話です・・僕はアメリカが好きですが、住みたいとは思いません。
こうしてここを通過するだけで、もう精一杯。

邪念を振り切り再びI-70の上。前方は何マイルも延々と続く、エッジの利いたメサの縁。
まったくここも、パースが狂った地球外の風景ばかりで凄いとこです。
もっとこの道を走りたい気分なのですが、残念ながらExit 149で降り、ハンクスビル(Hanksville)方面のUT-24へ合流しなければなりません。

フリーウェイを降りて辺鄙な州道に入る理由は、この先に目指す公園が点在するため。
漠然とした原野に定規で線を引いたような、長い直線が連続するUT-24を、南西に進みます。

UT-24をそこそこ進んだ所で、さらに右折します。
次の目的地はゴブリンバレー州立公園(Goblin Valley State Park)。
センターラインすら引いてないこの辺鄙な田舎道を、15分ほど進んだ先に地味に存在します。
何が悲しくてこんなとこに来たんだとか思ってしまいますが、でも道が舗装されてるだけマシ。
どういう訳かケント・デリカットの「ユタは田舎じゃないよ」が脳内にリフレインしてきました。



田舎だよ。

ゴブリンバレー州立公園に到着。
入園後すぐ視界に現れるのは、風と水が刻んだ奇妙な小鬼(Goblin)たちの「彫刻」群。
でも僕が気になったのは、公園ゲート(Entrance Station)にいたパークレンジャーのおねーさんｗ
「今日は風が強いけど楽しんでね」と、嘘偽りのない笑顔（人を見る目は確かだと思うｗ）で挨拶してくれた推定年齢25の美人さんが、一体なぜこんな辺鄙な所に就職してるんだろう（ ´Д｀）・・
公園とは全く関係ないことばかりが、妙に気になりだして仕方ありません。

オブザベーションポイント(Observation Point)より1枚。下に人がいるのがおわかりでしょうか？
あのおねーさん、本当はもっとメジャーな公園で仕事したかったけど、何か訳あってこんな辺鄙な公園に左遷させられちゃったのかな等、勝手な想像を繰り返します。
人の背丈よりもふた回りほど大きいマッシュルーム状の砂岩がゴロゴロ集合している光景は、小鬼と言うよりもNTTドコモダケ一家にも見えて、少しかわいい。

僕も下に降りてみます。
いやでもここは州立公園だし、国立のアーチーズやブライスキャニオンとは管轄が違うから左遷はないでしょ最初からここ志望だったんじゃないのとか考えます。
彼女はグリーンリバーの町出身。そこから通勤してるから無問題なの。彼女はやりたい仕事を志望した勤務地でやってるのとか妄想は続きます。まったく他人の人生に干渉しすぎｗ
それにしてもここは、吹き付ける強風で乾燥した砂が大量に舞い、目をあける事が実に辛い。
先ほど「砂嵐を体験してみたい」などと放言しましたが、撤回します。すみませんでしたm(_ _)m

この公園の写真の色合いが淡すぎるのは、ひとえに大量に舞ってる砂のせいです。
もうこれ以上砂埃に目が耐えられないので、ちょっと早いが撤退しようと思います。
おねーさんもこんな所で、よく挫けずに頑張ってるなあ・・
それに比べてまったく俺ってば、根性なし。

公園ゲートにて、ワイルドホース・ビュート(Wild Horse Butte)をバックに1枚。
おねーさんがまだいたので、「バイバ〜イ」と呼びかけたら、お茶目にポージングしてくれました。
ありがとう。僻地にもめげず、砂嵐にもめげず、また会う日までお元気で(´･ω･｀)ﾉｼ
帰りしな、ブルーハーツの「人にやさしく」をカーステで流します。
聞こえてほしい、あなたにも、ガンバレ！