Amtrak, Sunset Limited (New Orleans,Louisiana → Los Angeles,California ,Part 3)

ラウンジカーに引き篭もり、iPhoneに入った山下達郎の「ジャングル・スウィング」を聴いてると、Bluetoothヘッドフォンを耳から剥ぎ取られ、一体何事かと後ろを振り返る私。
「いいビート(Nice Beat.)だね。『ジャングル・ビート』って曲だなきっと」と、マット君。
よくわからないけどご機嫌だね・・ しかしどこかで聞いた事あるセリフだなおいｗ
億万回とやり過ごす貨物列車。米国の鉄道では西に進むに従い架線やトンネルがないからか、「ダブルスタック(Double Stack)」と呼ばれるコンテナ二段積みが多く見られるのが特色。
アムトラック、サンセット・リミテッド号の旅第3編。引き続きお届けしましょう(´・ω・｀)

窓の外はすっかり自分好みのアメリカ南西部。しかしここはまだテキサス(Texas)州。
この州の東側はニューオーリンズ(New Orleans)に似た南部のジメジメ湿った土地だったのに、気がつけばすっかり、この変化は一体何？
そしてタイムゾーンもこの辺で中部時間帯(CST)から山岳部時間帯(MST)へ切り替わりました。
1日が1時間長くなり、ちょっと得した気分でしょうか・・暇だけどな・・

ようやくテキサス州西端のエルパソ(El Paso,)。定刻13:22到着の筈なのに18:20ですよ奥さんｗ
5時間の遅延。新幹線のぞみ号で例えるともう博多到着の時刻にまだ東京駅にいるようなもの。口から魂が出ましたヽ(ﾟ∀｡)ﾉ 先はまだ長いのに、これから一体何時間遅れるんだよ・・
そうなったのも全てはこいつら貨物列車のせい。一応写真には収めましたが、見飽きましたｗ
思い悩んでると、この駅で乗り込んで来たポリスメンに、なんとﾒﾝﾍﾗ婆さんが連行された(ﾟдﾟ|||)

お縄にされて強制的にドナドナさせられた婆さんを見届けると、妙に感傷的な気分に。
確かにウザい事この上なかったが、足も悪いのに、なにもそこまでする事なかったんじゃないと、今横に座り警察の事情徴収を受けているマット君に言いたかったが、何も言えませんでした。
警官が立ち去り、自分が複雑な表情してるのを汲み取ったのか、「君は優しいんだね」と一言。まあ俺もこうなる事態を追認した一人だからな・・ 夕陽がやけに目に染みます。

気分を変えましょうか・・ 出発直後に南側に見える風景は、エルパソと国境線を隔てた隣町の、シウダー・フアレス(Ciudad Juarez)。麻薬戦争の最中では、治安最悪の悪名を轟かせた街。
これよりメキシコ(Mexico)との壁にしばし接近し、異国の町並みを眺める箇所を通過する区間。車窓から垣間見るだけでもアメリカとは全く異なる雰囲気を伺えて、実に興味深い。
治安は回復基調にあるとの話ですが、亀の甲羅に頭を乗せられた元カルテル幹部が徘徊してもおかしくない雰囲気だと思うのは、ブレイキング・バッドの見すぎのせいでしょう。

陸路で隔てた国の境を見るのは初めて。トランプ大統領の強硬な壁建設が耳目を集めた事や、映画メン・イン・ブラックの冒頭シーンを思い出したり、悲喜こもごもを想像しつつ、撮影。
実際にはメキシコが壁建設の費用負担を米国から強要される事にはならなかったようですが、ホンジュラス等の中米諸国で発生した不法移民をメキシコで食い止めないと、全ての輸入品に関税を課すと脅かされたり、難民申請は今後米国入国の事前、でも面接は数ヶ月後といった、ちょっと人道的にどうなのという手法で諦めさせられ、物理的な壁を建設せずとも事実上の壁ができてしまい、トランプさんが描いたであろう目論見は叶ったのであった(´・ω・`)

サンセッド・リミテッド号より望む、サンセット。
日没をエルパソで迎えるとはな・・ だが絵になるので良しとしましょう。座って飲み食いしただけの割に今日もいろいろあったなと苦笑しつつ、僥倖なのは、改善点が2つもある事。
1つ、複線区間になりました。脱兎の如く駆け抜けてくれるので、回復運転が期待できます。
もう1つ、エルパソで車掌がｸｿﾊﾞﾊﾞｱから交代したらしく、この方と仲良くなれたのが良かった。

車掌「綺麗な月ですね。たくさん写真を撮ってください。」
筆者「あっちはメキシコですよね。」
車掌「そうですよ。私の故郷です。是非次は私の国にも旅行にいらしてくださいね。」
笑顔がガス・フリングに似ているヒスパニック系ナイスミドル。今、この人と同じ月を見ている。
ああ、やはり旅とはいいものだ・・

エルパソの街を抜けた所でニューメキシコ(New Mexico)州。I-10に寄り添いデミング(Deming)やローズバーグ(Lordsburg)の小駅に停車。
複線区間を走ってるというのに両駅とも5時間弱の遅延。改善すんのかな＿|￣|○ 記録を残す自分はなんだかかつての高橋尚子(Qちゃん)のタイムを計測している小出監督の気分。
この調子だとロサンゼルス(Los Angeles)到着も昼過ぎだろうし、正午に予約入れたレンタカーがキャンセルされてもおかしくない。焦ってきました(；・∀・) シラフだと不安に押し潰されますよね。それにこの辺まだホワイトサンズ国定公園(White Sands National Monument)の近所だしな・・ あとどんだけ移動しなければいけないんだorz でもラウンジカーで酒に溺れてると、悩みなんか不思議に解消。もうどうにでもな〜れ。
　　　*ﾟﾟ･*+。
　　 ｜　　　ﾟ*｡
　　｡∩∧∧　　*
　 + (･ω･`) *+ﾟ
　 *｡ヽ　　つ*ﾟ*
　　ﾞ･+｡*･ﾟ⊃　+ﾟ
　　 ☆ ∪　 ｡*ﾟ
　　　ﾞ･+｡*･ﾟ。

泥酔しつつアリゾナ州ベンソン(Benson, Arizona)。定刻だと17:18到着予定も、21:57到着。
またわけのわからぬ長時間停車に苛まされます。諦めてるので空虚な心しかありません。
そして何故かまた警察官が車内に。どうやら何者かが「また」連行された様子です。


(；ﾟдﾟ)・・・・・


荒谷二中かよｗｗｗ



改行を多用し、フォントを大きくして表現したい。何なんだこのクレイジートレインは(；´Д｀)
中島みゆきの「世情」が流れるかと思ったぜｗ すまんな金八先生世代なもんで。
22:25分、シュプレヒコールも5時間のディレイを回復する事もなく、再び闇へと移動しました。

腐ったミカンのような現実に向き合う事に疲れ果て、酒の力をさらに借り、強制的睡眠モード。
どうやら未明。ツーソン(Tucson)やユマ(Yuma)を通過し、アリゾナ州を抜けたようです。
頼むから少しでもロスに近い所で目醒めてくれと祈念しつつ覚醒した場所はインディオ(Indio)。音楽フェスで有名なコーチェラ(Coachella)の隣町ですね(´・ω・`)
再び鬼神のような走り。「明日から本気だす。」と言って本気出した奴を過分にして知らないが、この列車もたまにはそれをやってのけるのである。

AM7:05。パーム・スプリングス(Palm Springs)に到着。定刻より5時間遅延は変化のないまま、何とか終点まであと3時間の場所まで辿り着きました。これ以上遅れる事がなければマシかと、手を打つしかありません。
別名「砂漠のオアシス」。有名人や金持ちの別荘が林立し、軽井沢に似た立ち位置でしょうか。しかし誰もが目を引くこの界隈の名物は、この一帯に執拗に立ち並ぶ風力発電群。
物珍しく奇異に映っても、こんなの今じゃアメリカの何処にでもありふれた風景。拙作でも何度か似た場所を紹介した事がありましたが、ここはその中でもよく知られている場所でしょう。

そうは言いつつも何だかエヴァンゲリオンみたいな世界観だな(ﾟ�听)
使徒が襲来してもおかしくない、正式名称'San Gorgonio Pass Wind Farm'の、日常の風景。

気がつけば酔っぱらいがクダまいただけの乗車録にしかならなかった。許してくださいｗ
そういや暇にまかせてｳﾀﾞｳﾀﾞ徘徊した割に車内を紹介しきれてなかったな。申し訳程度ですが終点に着くまで駆け足で、この列車の設備にも触れておきましょう。
こちらは寝台車(Superliner Roomette)。対面シートを倒すとフルフラットベッドに変化するのは、在りし日の14系ブルートレイン「さくら」の開放式A寝台車を思い出しました。とは言えエミレーツのファーストクラスみたく壁で区切られ、セパレートな空間を保証されます。
ただ自分が利用したコーチシートが＄138だったのに対し、こちら＄600と4倍以上もするのは、居住性はともかく到着時間がルーズすぎるゆえ、高すぎないかの感想です(´・ω・`)

食堂車もあります。利用したければ事前に車掌を通じて予約を入れ、自分の席が用意されると車内放送を通じて呼び出されるシステム。
筆者は1回も利用しませんでした。前の頁で書いたように一人旅だと見知らぬ人と同席にされ、飯食いつつ英語で「社交」するのが面倒に思えたからです。
そうでなくともここは誰かが声がけしてくる、アガサ・クリスティのオリエント急行殺人事件の様な密閉空間。スナックコーナーで食材やアルコールを調達し、テーブルを一人で占拠し飯を喰い、天窓装備で視界最強な環境で車窓を眺めつつ、自分の世界に籠る事ができるラウンジカーが、自分の性に合っている気がしました(´・ω・`)

さて長かった移動もそろそろ終点間際。夥しく湿気漂う米国南部から、カラッとした空気で風景が垢抜けて見える雰囲気は、まごうことなき西海岸。
2泊3日移動に明け暮れたり、長時間停車を繰り返したり、やっとここまで辿り着いたかと思うと、感慨深いものがあります。

ロサンゼルスのダウンタウン(Downtown)を背景に最後に大きな弧を描き、ユニオンステーション(Union Station, Los Angeles)へラストラン。
道中お世話になったマット君との会話も弾みます。
「レンタカーをキャンセルされなくて良かったじゃないかｗ」
「まあね・・しかし君の国の鉄道は、我々には理解しがたいところばかりですよ。改善してくれ。」
「イヤこればかりはもう無理っすヾﾉ ；-д-｀)」

「あ、話は変わるけど、これは日本のハンディーファン、『扇子』と言うんだ。君にあげるよ。
（閉じた状態からバッと開いて、ワザと相手に対してバサバサ扇いでみせる演出付き）
私の旅をサポートしてくれた小さな感謝さ。どうか受け取ってほしい。」
そう伝えると、喜んで受け取ってくれてたので、こちらもホッとした気分になりました。
なに扇子なんて、実は自分の趣味の神輿担ぎで、いろんな町会からタダで貰えるわけですｗ
横流ししてるだけなんだけど、自分には渡米時こちらの方のお土産用として結構便利アイテム。こんな感じで今まで5つくらい渡した事がありますよ。
そうこうしてるうちにようやく下車できる頃合い。それじゃあここで、お達者で。

本来であればAM5時35分に到着しておかなければならぬダイヤの筈なのに、10:10分の到着。結果4時間35分の、大いなる遅延。この後の予定に安全係数を組み込んでおいて良かった。
特急料金払い戻しだろ常識的に考えてｗ
米国アムトラックの旅はお薦めですかと言われれば、そうですね・・到着後数時間後に飛行機に乗って帰らなきゃならないといった方には、決してお薦めできる物ではありません。

でもそうでなく、時間に余裕のある方で、かつ人間関係の面倒くささをある程度捌ける方のみ、「試しにやってみれば？」と、囁きましょう。
終点でやっと先頭まで徒歩移動可能。ここまで遥々牽引してくれた機関車に、乙 (￣^￣)ゞ;